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黒河 研究室

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黒河 研究室

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黒河研究室のページにようこそ。

この研究室では、SHIにおける他の教員とは異なり、社会科学、特に行政学・公共政策の観点から、医療分野におけるイノベーションのための技術ガバナンスや政策形成過程における科学的知見の活用に関する研究を行っています。

研究テーマ

研究テーマ1:イノベーションのための技術ガバナンス

新たな技術特性を持つがゆえに既存の規制では対応できず、ルールの変更や新たな規制の導入を必要とします。そのため多くの新興科学技術は、技術的な成熟に比べて実際の規制の導入が遅れるという事態(「規制のラグ」)に直面することになります。こうした規制の遅れは、実際の製品・サービスのコーマーシャライズを遅らせることにつながります。どのようにしてタイムリーかつ・適切な規制を新たにデザインし実行できるか、そのためのガバナンスのあり方についてイノベーションのための規制政策という観点から研究しています。

 

黒河昭雄(2022)「革新的な製品・サービスに対する新たな規制の導入プロセスに関するケーススタディ ―AI医療機器を事例に」『レビュー』東京財団政策研究所, 2022年2月, https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3928
黒河昭雄(2023a)「レギュラトリーリスクと制度的な公正性 -がん免疫治療薬「オプジーボ」をめぐる緊急薬価改定を事例に」『レビュー』東京財団政策研究所, 2023年6月, https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4270
黒河昭雄(2023b)「価格決定に関する制度的な公正性に関する研究」年次学術大会講演要旨集, 38, 2023年10月.
黒河昭雄(2024)「第4章 科学技術政策における官民関係の変容-医療を事例として」『政策研究:社会課題対応のための科学技術政策システムの再構築』東京財団政策研究所, 2024年3月, https://www.tkfd.or.jp/files/research/2023/城山PG/政策研究_社会課題対応のための科学技術政策システムの再構築.pdf

研究テーマ2:政策形成過程における科学的知見の活用に関する研究(「政策のための科学」)

政策形成過程において、いかなる条件とプロセスによって科学的知見が活用されるのか(あるいはされないのか)について研究しています。特に、研究者が研究活動という営みを通じて創出した科学的知見をどのようにして現実の政策形成に結び付けるのか、エビデンスの創出と政策過程における受容に関する有形無形のナラティブ(戦略やアプローチ、判断等を含む)に関心を持っています。また、専門家と政策担当者との間にみられる非公式な情報提供とその受容をめぐる関係性を明らかにすることで「非制度的な科学的助言」(Informal Science Advice)というフレームワークを構築することを目指しています。

黒河昭雄(2021)「政策実装型研究開発に求められる要件についての研究」研究・イノベーション学会一般講演要旨集, 36: 180-185, 2021年10月, https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/bitstream/10119/17890/1/kouen36_35.pdf
黒河昭雄, 菊地乃依瑠(2022)「専門家による政策形成過程への関与について」年次学術大会講演要旨集, 35: 359-364,2020年10月, https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/bitstream/10119/17408/1/kouen35_84.pdf
科学技術振興機構社会技術研究科開発センター(2020)「戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)『科学技術イノベーション政策のための科学』研究開発プログラム 中間評価用資料(研究開発プログラム 活動報告書)」2020年12月, https://www.jst.go.jp/ristex/funding/files/JST_1115110_MR2.pdf 

担当科目

授業科目(科目責任者)
・ヘルスイノベーション概論(ヘルスイノベーション研究科修士 1 年前期)
・レギュラトリーサイエンス概論(ヘルスイノベーション研究科修士 1 年後期)
・政策分析・政策立案演習(ヘルスイノベーション研究科修士 1 年後期)
 
授業科目(科目担当者)
・健康・医療政策(ヘルスイノベーション研究科修士 1 年前期)
・社会健康学・社会疫学(ヘルスイノベーション研究科修士 1 年後期)
 
フィールド実習
・フィールド実習ⅠA「ベンチャー投資における意思決定演習」(ヘルスイノベーション研究科修士通年,科目責任者)
・フィールド実習ⅠA「イノベーション・エコシステム演習」(ヘルスイノベーション研究科修士 通年,科目責任者)カリフォルニア大学サンディエゴ校との連携
・フィールド実習ⅡB「女性の健康プロジェクト」(ヘルスイノベーション研究科修士 1 年後期,科目担当者)

政策分析・政策立案提言

本演習では、地方行政および地域社会が直面する様々な課題のうち、①すでに政策担当者が認知しているものの具体的な解決策が用意されていない課題、②すでに政策担当者によって認知され一定の政策手段が講じられているものの解決に向けて十分な効果が上げられていない課題の2つの類型を対象として、参加学生がグループを組成し、文献調査および自治体職員やステークホルダーらに対するインタビュー調査の実施、アンケート調査等のデータ分析を通じて、問題の発見と構造化、エビデンスの取集、そして解決策の提案を試みます。

最終発表会では、神奈川県幹部を招いたうえで参加学生が構想した政策提案を発表することで、単なる教育にとどまらず実際に施策への反映を目指します。

 

矢澤瑞季, 草深鉄兵, 古宮將太, 星名美佳, 黒河昭雄「働く女性のヘルスリテラシー向上に向けた具体的支援政策の検討」神奈川県立保健福祉大学誌,21巻第1号,123-137, 2024年3月, https://kuhs.repo.nii.ac.jp/records/2000050
草野哲史, 黒河昭雄「神奈川県における保健医療データの活用の阻害要因に関する考察」神奈川県立保健福祉大学誌, 21巻第1号,111-121, 2024年3月, 
https://kuhs.repo.nii.ac.jp/records/2000051

ヘルスイノベーション概論・レギュラトリーサイエンス概論

ヘルスイノベーション概論では、医療やヘルスケアをとりまくイノベーションの技術動向・政策動向を俯瞰するとともに、ヘルスイノベーションを考えるうえでの基礎となるフレームワークの獲得を目指します。また、レギュラトリーサイエンス概論はその応用編として、医療やヘルスケアが多くの規制によって仕切られているという認識に立ったうえで、現実の様々な政策、特に規制政策がイノベーションとどのような相互作用を持っているのかについて理解を深めることで、規制がイノベーションのブレーキではなくドライバーになるという視座を獲得します。

受験生へのメッセージ

SHIの受験を考えられている方のなかには、公衆衛生の大学院でなぜ社会科学、それも政治や行政の話をするのか?と思われるかもしれません。確かに私の専門は公衆衛生学という領域に直接位置づけられているわけではありません。ですが、人々の健康の保持や増進、疾病の予防といった公衆衛生に関する諸活動の多くは、公的な組織あるいはそれに準ずる機関によって担われています。その意味では、そもそもの目的はもちろん、その実践の面においても公衆衛生はいわゆる「公共政策」を代表する一領域であるといえます。
こうした公共政策という考え方は、医療現場や製薬・医療機器メーカーなどの現場で活躍される皆さんからすると、自分とは直接縁のない、雲をつかむような話であるように思うかもしれません。ですが、こうした公共政策のあり方が、皆さんの仕事のあり方そのものやそのパフォーマンス、そして経済的な価値さえも規定しているわけです。実際に、皆さんが日々感じられる違和感のなかには、実はこうした政策的な課題が大きく横わたっているのではないでしょうか。
政策というのは人が作り出した知恵であり技術です。問題があるのであればそれを改めることでより良い結果を導けるはずです。ぜひSHIで、公衆衛生をとりまく政策課題を自分事としてとらえ、その具体的な解決策を一緒に考えてみませんか?

自己紹介

1985年生、山口県出身。東京大学公共政策大学院修了。東京大学政策ビジョン研究センター、明治大学国際総合研究所等にて医療政策、医療イノベーション政策の研究に従事した後、2016年8月から国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 社会技術研究開発センター(RISTEX) アソシエイトフェローとして、科学技術イノベーション政策に関する研究開発を担当。その後、SHI/CIPの開設に伴い2019年4月からイノベーション政策研究センター研究員(シニアマネージャー)。2023年4月より現職。専門は、行政学、公共政策、レギュラトリーサイエンス、医療イノベーション政策、科学技術イノベーション政策。現在の主な問題関心は、「規制のラグ」の発生と制御のための法政策、政策形成過程における科学的知見の活用条件とプロセス(「政策のための科学」)。

「(SciREX インタビュー)研究と政策を繋ぐ「中間人材」の経験の活かし方」SciREXクオータリー18号, https://scirex.grips.ac.jp/newsletter/vol18/04.html

「POLICY DOOR 研究と政策と社会をつなぐメディア」 https://www.jst.go.jp/ristex/stipolicy/policy-door/

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