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新型コロナ関連のスティグマ(差別や偏見)で心の健康や生活の質が低下

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新型コロナ関連のスティグマ(差別や偏見)で心の健康や生活の質が低下

~スティグマが心の健康や生活の質に及ぼす影響について(研究報告)~

 

 本学大学院ヘルスイノベーション研究科では、未病コンセプトに基づく社会システムや技術の革新を起こすことができる人材の育成とともに、健康長寿社会を実現する研究活動を実践しています。

 その一環として、このたび本学の中村翔講師をはじめとする研究者が実施した標記の研究成果がまとまり、論文として Frontiers in Public Health に掲載されましたので、お知らせします。

 

1 研究の背景・目的

 新型コロナウイルス感染症の流行初期など、特にワクチンや治療法が確立されていない状況下においては、感染者が直感的に感染症そのものと結びつけられて社会的な偏見を持たれたり、 差別を受けたりする「社会的スティグマ」が報告されています。そこで、本研究では、新型コロナウ イルスに感染したことがない方を対象に、新型コロナに関連するスティグマ(以下「スティグマ」と いう。)がどの程度存在するのか、さらにスティグマが心の健康や生活の質にどの程度影響するのか明らかにすることを目的に、令和2年12 月から神奈川県みらい未病コホート研究(※)の協力者に対してインターネット調査を実施しました。(回答数 257 名)

 

(※)県民のゲノム情報や生活習慣の情報を収集、ビッグデータ化することで疾患リスクを明らかにし、未病対策に役立てることを目的に、神奈川県の協力を得て、運営しているゲノムコホート研究。

 

2 研究結果

〇 スティグマの数値が高いほど、心の健康や生活の質に関する指標の数値が低く、スティグマが心の健康、生活の質にマイナスの影響を及ぼす可能性が示された。

〇 年齢が 70 歳以上の層が、他の年代と比較してスティグマを持つ傾向が明らかになった。

 (背景として「一度感染してしまったら二度と元の生活には戻れなくなってしまうのではないか」 という考え方がスティグマに強く影響していた。)

 

(スティグマの測定)

 がんスティグマが計測できる Cancer Stigma Scale (CASS)の日本語版である J-CASS を用い、「がん」を「COVID-19」に置き換えることで質問票を作成した。

 K6(6項目ケスラー心理的尺度)は6項目の尺度で構成され、うつ病や不安障害等の精神的苦痛を5段階で評価できる尺度。EQ-5D-5L(EuroQol 5-Dimention 5-Level)は健康関連の生活の質を5つの領域から5段階で評価できる尺度。これらの項目とスティグマとの関連は共分散構造分析を用いて調査した。

 

3 まとめ

 本研究結果から、感染していない集団においてもスティグマが存在し、心の健康や生活の質にマイナスの影響を及ぼしていたこと、また、70 歳以上の層でその傾向がより強いことがわかった。今後新たな感染症が流行した場合には、心の健康や生活の質の確保するため、ターゲットを明確にしたメッセージなど、感染の有無に関係なくスティグマを低減する取組を考える必要がある。

 

(論文掲載)

Sawaguchi E, Nakamura S, Watanabe K, Tsuno K, Ikegami H, Shinmura N, Saito Y, Narimatsu H. COVID-19-related stigma and its relationship with mental wellbeing: A cross-sectional analysis of a cohort study in Japan. Front. Public Health. 2022; 10: 1010720. doi: 10.3389/fpubh.2022.1010720

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpubh.2022.1010720 

 

問合せ先

公立大学法人神奈川県立保健福祉大学大学院

ヘルスイノベーション研究科 

講師・中村翔

ヘルスイノベーションスクール担当部長 沖田

電話 044-589-3312  shi-press@kuhs.ac.jp

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