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高血圧など健康状態の悪化を未然に防ぐための最新テクノロジー

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高血圧など健康状態の悪化を未然に防ぐための最新テクノロジー

~包絡分析法を応用した高血圧の一次予防に関するランダム化比較試験(研究報告)~

 

 本学ヘルスイノベーション研究科では、未病コンセプトに基づく社会システムや技術の革新を起こすことができる人材の育成とともに、健康長寿社会を実現する研究活動を実践しています。

 その一環として、このたび本学の中村翔講師をはじめとする研究者が実施した標記の研究成果がまとまり、論文としてBMJ Openに掲載されましたので、お知らせします。 

 

1 研究の背景・目的

 健康状態の悪化を未然に防ぐために、市町村では健康教室の開催や情報発信などが行われています。しかし、こうした情報は、「健康」に興味がある方や、「健康」意識が高い方など病気のリスクが低めの人に届きやすく、将来の病気のリスクが高い人にはあまり届いていない可能性があります。

 そこで、「健康」と言われている方のなかでも、将来病気になる可能性が高い方、予防をしなければ病気になってしまう方を見つけ出し、その方に向けて指導や情報発信を行いたいと考え、包絡分析法(DEA)を応用した研究を実施しました。

 

 (包絡分析法(DEA :Data Envelopment Analysis)について)

 DEA は、企業や事業体の生産性や効率性を評価・比較する際に広く用いられる手法で、高血圧、肥満、脂質異常症などの病気になりやすい方の発見に応用できる可能性が報告されていました。今回、DEA を市町村が実施する特定健診に組み合わせることができる形で応用し、 山形県高畠町と共同で介入研究を実施しました。 

 

2 研究結果 

〇 DEAによって計算された「今は高血圧ではない人の将来の高血圧になりやすさの点数」が 悪い人の方が、実際に1年後により高血圧を発症している割合が高いことが観察されました。

  このことにより、健康診断で「正常範囲」と判定される方のうち、翌年度に高血圧を発症する可能性の高い人を判別することに応用できる可能性があります。

〇 一方で、上記のリスクを手紙で通知するだけでは、高血圧の抑制効果は得られませんでした。(手紙を送るだけでは対策として不十分である可能性があります。) 

 

3 まとめ

 これまで保健事業などで中心となっている早期発見・早期治療による対策(二次予防)に加えて、本研究結果により、健康であっても将来病気になりやすい方を対象とすることができます。

 このことにより、健康状態の悪化を未然に防ぐことができるようになると考えます。

 今後も、DEA を応用した研究に取り組んで参ります。

 

(論文掲載)

Nakamura S, Kanda S, Endo H, Yamada E, Kido M, Sato S, Ogawa I, Inoue R, Togashi M, Izumiya K, Narimatsu H. Effectiveness of a targeted primary preventive intervention in a high-risk group identified using an efficiency score from data envelopment analysis: a randomised controlled trial of local residents in Japan. BMJ Open. 2023; 13: e070187. 

問合せ先

公立大学法人神奈川県立保健福祉大学大学院

ヘルスイノベーション研究科 

講師・中村翔

ヘルスイノベーションスクール担当部長 沖田

電話 044-589-3312 shi-press@kuhs.ac.jp

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